“前例なき人と植物の共生空間
「LUFTBAUM」”
(左から)
箱根植木株式会社
樋口開渡・笠井真志
FUGA TOKYO株式会社
藤田良則・仲村博之
GRANSCAPE Inc.
大石剛正・矢彦沢美奈
MYU PLANNING INC.
中村信浩・櫻田麻理衣
ニュウマン高輪の28F・29Fに広がる「LUFTBAUM(ルフトバウム)」では、通路にまで伸び伸びと育つ草木、大きな木々が生い茂る庭園、生き生きとした壁面緑化などを中心に、多種多様な植物がショップと共存しています。
「このプロジェクトは、ルミネさんからの『100年先を見据えた場づくり』というビジョンを受けて始まりました」と話すのはフロアプロデュースを担当したMYU
PLANNING(以下MYU)の2人。ここに、室内植栽担当のFUGA
TOKYO(以下FUGA)、庭園を担当するGRANSCAPE、搬入・施工の箱根植木の4社が集結し、これまでにない商業施設の植栽空間を実現しました。「人が良く、一流であり、植物の話になると目がキラキラと輝く方ばかりでした」とMYUの中村信浩さんは振り返ります。
植物が主役となる空間づくり
LUFTBAUMの最大の特徴は、植物を主役として位置づけた空間設計です。「普通の商業施設では、植栽は背景としての役割が多いのですが、今回は体験の大きなコンテンツとして作り上げていくことを重要視しました」とMYUの中村さんは説明します。
その象徴的な取り組みが、通路への植物の枝葉の飛び出しを許容したことです。「一般的にはまずやらないことですが、植物の持ち味を最大限活かすために、木が輝くなら思い切って飛び出させることを優先しました」とFUGAの仲村博之さんは語ります。「人の心を動かす空間づくりを第一に考えています。グリーンに興味のない人でも振り向いてもらえるように、記憶に残る場所にしたかったのです」。
庭園「翠の庭」では、日本の圧倒的な四季を表現するため、あえて落葉樹を多用しています。「春なら桜、秋なら紅葉を圧倒的に見せるために、同じ樹種を集中して配置しています」とGRANSCAPEの大石剛正さん。「冬には葉を落とした枝の美しさや、樹皮に付く水滴の輝きまで楽しんでいただけます。商業施設では珍しいですが、本来の植物の姿を大切にしました」。
チームを変えた沖縄での出会い
プロジェクトの転機となったのは、FUGAが沖縄の植木生産者の沖縄植物園を訪れた際に紹介されたホテルでの出来事でした。「見惚れるほど力強く、のびのびと育った木があり、『私たちが伝えたい植物の魅力はこれだ』と感じました。後日、皆さんにホテルまで来てもらい、その木を見ながら打ち合わせをして、チームの目指す場所が定まったのです」とFUGAの藤田良則さんは振り返ります。
そして、LUFTBAUMがここまでの空間に仕上がった背景をMYUの櫻田麻理衣さんはこう語ります。「ルミネさんから『やり切ってください』と言われたんです。自分たちとしてはちょっとやり過ぎかなと心配するような場面でも『もっとやっちゃってください』と言われ、ここまで言われたら私たちも奮起しないわけにいかないですよね」。
施工にも宿る挑戦
結果的に、施工面でも前例のない挑戦が実現しました。樹齢100年のチャボヒバを28Fまで搬入する際には、クレーンで吊り上げるという通常では許可されない方法を採用。「風が少しでも吹けば振られてしまい、ビルに当たってもおかしくない状況でしたが、天候にも恵まれ、一発で成功できました」と箱根植木の笠井真志さんは振り返り、「普通なら絶対にやらせてもらえない方法ですが、皆で知恵を絞ることで実現できた。改めて人の力の凄さを感じました」と同社の樋口開渡さんも続けます。
この挑戦の背景には、もちろん多くの植木の生産者の努力がある。GRANSCAPEの矢彦沢美奈さんも「長年大切に育ててきた植物がこのような場所で輝いているのを見れば、『自分たちの仕事にはこういう意味があるんだ』と生産者の方々もきっと希望を持ってくださるのではないかと思います」と話します。
人はいつの時代も植物と共生し、多くの実りや知恵を受け取りながら発展してきました。LUFTBAUMは、商業施設における人と植物との新しい関係を提示する、100年先を見据えた空間として誕生しました。